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前回の前夜祭の続き。
デュラの帝人誕生日小説です。
前回と同じくほのかにBLな匂いがします。ご注意ください。

長いので3つに区切ります。

 




 扉を叩く乾いた音に、帝人は夢の淵から現実へと引き摺り戻された。のそりと布団の中で蠢く塊は低く唸って玄関に視線を移す。しかしその眼は未だ合っていない。

 暫しそのままの硬直状態が続く。そして――
 もぞもぞと芋虫のようにまた布団の中へと帰った。
 昨日も寝るのは遅かったし、今日も夜遅くなる予定だ。そんな彼は目の前の来客よりは自分の惰眠を優先した。
 が、しかし――
 ガチャリ
「!!?」
 あり得ない解錠音に音速で眠気が吹っ飛び、布団を跳ねのけ飛び起きる。
 そして絡み合う帝人と侵入者の視線。
「何だ、居たの?」
 不法侵入しているにも関わらず侵入者――折原臨也は悪びれもせずに宣った。
「ふほうしんにゅうですよ。」
 今更である。
「何だ、まだ寝てたの?っていうか居るなら開けてよ。」
 図々しいなと覚醒しきっていない頭で思う。言葉に出すまでには至らない。
 だが至福の時間を邪魔されたことに対する文句は言わなければ気が済まない。
「こんな朝っぱらから何の用ですか?」
「……朝っぱらって、もう九時だよ?」
「用事が無い時の休日の起床時間はどんなに早くても十一時です。」
「わあ、それはまた現代人らしい不健康さだね。
 でも残念。流石にそんなには待てない。」
 何所か含みのある言い方に帝人は首を傾げる。
「臨也さん?そういえば今日はどうしたんですか?」
 雰囲気を変えた臨也を前にして、帝人はいつもの用の無い気まぐれ訪問ではないことを悟る。しかし、ニコッと女の子であれば誰でも落ちるだろう営業用スマイルを浮かべた臨也が相手ではその真意までは分からない。
「帝人君、今日誕生日でしょ?おめでとう!」
「はあ、ありがとうございます。」
 教えた覚えはないが指摘するのも面倒だ。というか今更だ。
「とりあえず着替えて。」
「え?何で――」
「帝人君がいいなら別にその格好で出かけても良いけど?」
 現在の帝人の服装はTシャツに短パンであり、出かける分には何ら問題は無いし、実際近くのコンビニくらいなら子の格好で行っている。が、しかし、臨也がどこまで行くのかは知らないが、その辺の自販機までということは確実に無いだろう。大都市池袋の街中をこんな明らかに寝間着ですという服で闊歩するのは小市民帝人にはできない。さらに、臨也の本拠地は新宿で、そちらの方まで足を伸ばす可能性だって大いにありうる。大都会新宿を以下略。
「…………着替えますから待ってて下さい。」
 たっぷり数秒間をおいて帝人は立ち上がった。
 何所へ行くのかとか、また今度とか、帰ってほしいとか、ウザいとか言いたいことは沢山あったが、何一つ無駄な気がして諦めた。
「言うまでもないかもしれないけど、服は動きやすいのにした方がいいよ。」
「へ?何でですか?まさかとは思いますけど運動するわけじゃないですよね!?」
「んー?まあそれは状況次第かな?」
 さああと血の気が引いていく。
「僕、なんか行きたくなくなってきました。」
「ハハッ!駄目だよ。もうこれは決定事項だからね。
 もう準備できた?じゃあ行こうか。」
「ちょ!!まだ僕服着てないです!」(現在パンツ一丁)
「うん、見れば分かる。
 いいんじゃない?動きやすいし。」
「分かりました!行きますから!だから着替え終わるまでもう少し待ってて下さい!」
 そうして慌てて服を引っ張り出して羽織る。だから気付かなかった。臨也が底の見えない笑みを浮かべていることに。
「臨也さん、用意できまし――」
 言葉は衝撃に呑みこまれた。
 ダンッと勢いよく帝人の身体はうつ伏せに畳に叩きつけられた。
「っ!」
 痛みのあまり声すら出ない。
 そうこうしている間に臨也の方は着々と事を進める。
 背後からカシャンカシャンという金属音が立て続けに鳴り、視界が黒く閉ざされる。腕は後ろに回された状態のまま動かせなくなり、目隠しをされて気付いた時には喋ること以外がままならない状態となっていた。
「よし、これで完了、と。」
「あの…臨也さん……?」
「ん?なあに?」
「えと、これは一体……?」
「これっていうのは何を指してるのかな?」
 不安だったのは一瞬。分かっているくせに聞いてくる通常運転な臨也に腹立たしい感情がこみあげてくる。
 だが現状は圧倒的に帝人に不利な状態。とりあえず相手がこれ以上何か行動を起こさないように、湧き上がる激昂を押さえつけて、あくまでも冷静に帝人は質問を投げかけた。
「僕手錠掛けられてません?」
「かけられてるね。」
「目隠しされてますよね?」
「そうだね。」
「どうしてこんなことしたんですか?」
「それはね、君を誘拐するためだよ。」
 さらりと告げられた犯罪予告に帝人はたっぷり十秒は固まった。その間、臨也は待つことはなかった。
「さあ、じゃあもう行こうか。」
 臨也は帝人の腕を掴むと強制的に立たせ、歩き出した。
 
「とびっきりの非日常を君に贈るよ。」
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ここでは形にならない設定だけの産物や、サイト内で取り扱う予定の無いジャンルの小ネタや小話を載せています。 でも、数が増えればジャンルも増える可能性大です。 100%趣味と偏見と妄想で出来ています。
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