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 閑静な日本家屋の一室での出来事。

「おい日本、いい加減ここを開けてくれ。」
「じじい、そろそろ温厚な俺様もキレるぜ。」
 純日本をいかんなく表現している屋内の一室で、明らかに日本的ではない男が二人、静かなる拒絶を露にしている襖の前で鎮座していた。ドイツ、プロイセンのゲルマン兄弟である。
「私のことなどお二人が気にすることはありません。どうか放っておいてください。」
 沈痛な面持ちで語りかける二人に対する日本の返事はまさに取りつく島がない。しかし、その言葉尻には悲壮感が滲み出ていた。
「はじめからわかっていたことなのです。このような結果になることもすべて。」
「まあ、確かにあれは酷かったな。」
「兄さん!」
「それなのに調子に乗ってそれにも気付かず、過ちを繰り返す。
 情けなさを通り越してもはや滑稽です。
 もうお二人にも合わす顔がありません。どうぞ私のような愚か者のことはきれいさっぱり忘れてください。私、日本はこれより解散し、今より南セントレアとして生きていきます。」
「ちょっと待て!!」
「止めないでください。これはもう決めたことです。」
「考え直せ日本!」
「お断りします。」
 得意の八橋も忘れ、ドストレートにNoを告げる日本。スイスあたりがこれを見たら感激の極みなのだろうが、今の状況ではこちらは素直に喜べない。
 さてどうしたものかと思案に暮れるドイツに業を煮やしたのか、それともちっとも進展しない状況に痺れを切らしたのか――おそらく後者の理由の方が大きいだろう――プロイセンが徐に襖に手をかけると、何のためらいもなく天の岩戸をスパーンと開帳した。
「いい加減にしろよじじい!!」
「ちょっ!勝手に入ってこないでください師匠!」
「黙って聞いてれば勝手なことばっかり言いやがって。」
 ちなみに、その勝手なことの原因に自分の言葉があったことはきれいさっぱり忘れている。
「たった一度失敗しただけで何だってんだ!お前はその失敗を次に生かせる奴だったはずだ。」
「………」
 日本は声も出せず、ただ彼を見上げていた。その眼の中にはたった今、消えかけた何かが再びくすぶり始めたように見えた。
「俺様はそんな軟弱な弟子を持った覚えはねえぞ。なあ、日本?」
 そして、その何かは再び熱を伴って炯然と輝きだした。
「ええ、当然です。この日本、決してこのまま終わったりなどいたしません。
 この度の失敗を繰り返さぬよう、分をわきまえる所存……いえ、違いますね。」
 日本はそこでいったん言葉を切ると、自身の前に立ちはだかるプロイセン、次いでその後ろに居るドイツに視線を投げかけた。その眼はかつての日本を彷彿とさせた。
「この失敗を次こそは成功に持っていってみせます。
 ええ、カレーにキャラメルラテという組み合わせでもおいしくいただけるような改善を施して見せますとも!」
「それでこそ俺様の弟子だぜ!」
 ケセセセと常の笑いを洩らす兄と、何やらよくわからない決意を抱く友人をどこか遠くを見る目で眺めながらふっと溜息をついた。
「そういう問題か?」
 しかし、そのつぶやきは幸いにというべきかやたらハイテンションになってる2人には届かないのであった。


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なあにこれぇ。

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